2023年5月11日 配信
突然ですが、人生の節目に何か特別なことをしたいと思う方は多いのではないでしょうか?
たとえば30歳、40歳という十年ごとの節目などに。
私は40歳になったとき、何か今までやったことがないことをしたいと思い、ピースボードに乗りました。約3ヶ月かけて世界を一周するという船旅です。
いざ船に乗ってみると、当然ながらいろいろな人がいました。
デッキに大きなキャンパスを出して日が沈むまで絵を描いている人、運動のため、ただひたすら甲板をぐるぐる歩いている人、ほぼ毎晩、社交ダンスを楽しむ人……。
「味覚ノスタルジア」の中の短編「波の療法」では、このピースボードでの体験がかなり入っています。物語の登場人物も、実際に私が船で出会った人々がベースになっています。
たとえば口笛のとてもうまい青年。
これは、よく甲板を散歩していたあるおじさまがモデルになっています。ビブラートをきかせて、まるで楽器のように気持ちよさそうに口笛を吹いていました。
ミルフィーユを一枚一枚くるくるとはがして食べる人も、ピースボードで初めて出会いました。
「これだけ大きな船だと一つの国家みたいなものだから」
これは「波の療法」に出てくるある男性の言葉です。
周りは海で、人々は船という限られた空間で暮らしています。船の中だけの法律や秩序が存在しています。
物語の中では、その秩序を乱す破天荒な女性が出てきますが、彼女は実際に私が船上で出会った複数の人をミックスして作り上げた人物です。書いている途中でなんだかとても懐かしい気分になりました。
船を降りてから早10年以上が経ってしまいました。
さすがに記憶は薄れつつありますが、船上での三ヶ月は私の人生の中で特異な体験として確実に糧となっています。
次の10年の節目の年にも、やっぱり今まで挑戦したことのないことをしてみたいなっ。
なんだかあっというまにその年が来てしまいそうな気がしますが……!
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人生の節目に何か特別な事をするとはひめるさんらいし。ピースポードを体験した人は周りにいないので是非読みたいです。楽しみにしています。