2024年1月22日 配信
そのとき私はよそ見をしていました。
広めの歩道を歩いていたのですが、近くに焼却施設があり、白いゴミ袋がうずたかく積まれてあってそれにすっかり目を奪われていたのです。
すごいゴミの量だなぁと思っていると、いきなり全身に衝撃を感じました。
何が起こったのか分かりませんでした。私はとっさに足を踏んばり、ずれた眼鏡を無意識のうちに直していました。
「すみませんっ!」
自転車に乗った黒いコートの女性が目の前にいました。
「大丈夫ですかっ?」
ああ、ぶつかったんだ、とそのときやっとわかりました。どうも正面から衝突したようです。軽い脳震とうが起こったらしく、クラクラしてよろけてしまいました。
「大丈夫ですかっ?」
同じテンションで女性が叫びます。
「はい、大丈夫です」
そう答えたのに、声が小さ過ぎたのか、「大丈夫ですか?」とさっきより少し抑えた調子で聞かれました。
「はい、大丈夫です。すみません。…し、失礼します」
歩き出そうとしたら、「大丈夫ですか」と再び声が追いかけてきました。立ち去ろうにも、足がうまく上がらず早く歩けません。
「大丈夫ですか? ほんっとに大丈夫ですか?」
女性は尚も聞いてきます。はい、とうなずいて、私はなんとか足を進めました。斜め後ろから、「大丈夫かなぁ」という独り言のような声。
そんなに私、大丈夫じゃなさそうなのかなぁ。
女性は自転車にまたがったままじっと私を見ています。振り返らなくてもひしひしと視線を感じました。
そのとき私は、背中に太陽と虹と雲が描かれた、とても能天気なセーターを着ていました。おまけに雲にはhappyと赤い字が入っています。
女性もきっとそれを見て、背中にハッピーって書いてあるからあの人大丈夫だろう、と思ってくれるんじゃないかとふと思いました。
太ももと左手が痛く、ぶつかったときの衝撃波がいまだ体じゅうを駆け巡っているようです。
大丈夫、大丈夫。骨は折れてない。ヒビも、たぶん入ってない。
買い物に行く途中だったので、そう自分に言い聞かせながらなんとかスーパーまで辿りつきました。そしてカートにしがみつくような形で、途中痛みにうめき声をあげながらも執念で買い物を済ませ、普段より10倍ほど長く感じる帰路をなんとか乗り切りました。
翌日──。
ふとももがとてもカラフルなことになっていました。青、紫、緑、水色。色とりどりのあざが大輪の花火のように咲いていたのです。
2日経つと、花火はふなっしーに変化しました。あのふなっしーの服の色合いになっていたのです。あざの位置がなんとなく顔のようにも見えます。
新年早々自転車と正面衝突するなんて、今年は気を引き締めないといけないかもな……人生何が起こるか分からないもんだなぁ……。
ふとももに現れたふなっしーを眺めながら、つくづくそう思う今日この頃なのでした。
話は変わりますが、お正月に凧上げをしている風景をしばしば見かけました。
写真は木に引っかかった凧さんです。うるんだ目が「おろしてくれ〰️」と訴えかけているよう……。
凧さんの下を通ったとき、じっと見おろされてるみたいでちょっと怖かったです。
1 件
えっ大丈夫ですか!?そういう時って「大丈夫です」って言ってしまいがちですよね…。洋服のHAPPYなんて文字、その人は何も感じていないと思いますが…。