第四章「静かな教室、揺れる記憶」(第6話)

「運命の7月5日」*プロローグ(第1話)はこちら 夕方の教室は静まり返っていた。帰りの会でざわめいていた空気は消え、窓の外からは遠くの波音と、湾岸を走るトラックの音だけがかすかに聞こえる。星野一星は、机の下に落ちていたプリントを拾い上げて、ふうっとため息をついた。 目次 1. 「残ってたのか、星野」2. 「父さんが、信じてたらしいです。受験から逃げたくて。」 「残ってたのか、星野」 声の主は、小山先生だった。資料を手にしたまま、教室の入り口に立っていた。 「はい。プリント落としちゃって、すぐ帰ります」 「焦らなくていいよ。俺も資料室に行くついでに寄っただけだしな」小山先生はそう言って、窓際へ歩 … 続きを読む 第四章「静かな教室、揺れる記憶」(第6話)