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2025年6月6日 配信
あなたが見る未来「運命の7月5日」*プロローグ(第1話)7月の大魔王はこちら 「……これは、マジでヤバいやつ来たかも」 放課後、いつものように図書室の隅に集まった一星、優斗、紗良。そこで見せられたのは、SNSで今まさにバズっている一本の動画だった。 タイトルは、『7.5 – 地鳴りはすでに始まっている』 動画の冒頭は、東京湾の夜景。その静けさを破るように、次第に聞こえてくる「ゴゴゴゴ……」という不気味な低音。 続いて、ノイズ交じりの音声が割り込む。 「記録は2025年4月20日午後9時。音源:豊洲・某マンション屋上で録音。地中からの“うなり”を聞いた者は、異常を感じていた。あなたは […]
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2025年5月22日 配信
あなたが見る未来「運命の7月5日」*プロローグ(第1話)7月の大魔王はこちら 日曜日の午後。東京・豊洲の空はよく晴れていたけれど、一星の心には靄(もや)がかかっていた。 「7月5日に東京湾から津波が来る──」 SNSで拡散されたデマ投稿は削除されても、スクショやコピペで“独り歩き”し、今や学校だけでなく地域の一部にも影響を与えていた。 でも、それがどこから始まったのか。誰が最初に言い出したのか。「それを突き止めることができれば、何か変わるかもしれない」一星は、そう思っていた。 「で?お前、デマの出どころを探るっての?……いいねえ、そういうの嫌いじゃないよ」リビングでポテチを食べていた父・真人が […]
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2025年5月18日 配信
あなたが見る未来「運命の7月5日」*プロローグ(第1話)7月の大魔王はこちら 教室の空気が、日増しに重たくなっていく。 防災訓練の翌週、ホームルームでの議題は一つ。 「7月5日に向けて、クラスとしてどう向き合うか」 ──誰もが避けたいはずだったその話題を、担任の矢口先生があえて取り上げた。 「最近、“7.5の日”について、ネットやSNSでいろいろな話が出ています。学校としてはすでに否定の見解を出しましたが、それでも不安な人もいるはずです。だからこそ、今日は皆で話しましょう。逃げずに、ちゃんと考えてみてください」 しばしの沈黙の後、手が上がった。 「……僕、避難するつもりです」 名乗り出たのは、 […]
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2025年5月17日 配信
あなたが見る未来「運命の7月5日」*プロローグ(第1話)7月の大魔王はこちら 昼休み、教室の空気はいつもと違っていた。 「ねえ……これ見た?」ミナがスマホをこっそり見せてきた画面には、SNSの投稿が表示されていた。 『知り合いの父が自衛隊で働いてて、機密情報だけど、7月5日、東京湾に“異常な動き”があるって言ってたらしい』 「またデマじゃないの……」一星が眉をひそめると、タクトがすぐに言い返した。 「でも、前もこういうの当たったことあったじゃん?えーと、何地震のときだっけ……」「でもでも見て、同じ投稿、もう5000リツイートされてる」 そこには、まるで本物のニュース風に編集された画像も添えられ […]
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2025年5月11日 配信
あなたが見る未来「運命の7月5日」*プロローグ(第1話)7月の大魔王はこちら その夜、一星はリビングで無言のままスマホを見つめていた。 SNSにはまだ「7月5日Tシャツ」の自撮りや「終末弁当チャレンジ」動画が溢れている。 「またその話?」キッチンから母・佳代が笑うように言った。エプロン姿のまま、手には缶詰とLEDライトを持っている。 「ちょうどいいから、アンタもこっち来なさい。避難袋の中身、もう一回チェックするわよ」 リビングの隅に置かれた大きなリュック。 開けると、中には非常食、水、簡易トイレ、モバイルバッテリー、スリッパ、乾電池……すべて整然と並べられている。 「これ、毎年3月と9月に見直 […]
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2025年5月11日 配信
あなたが見る未来「運命の7月5日」*プロローグ(第1話)7月の大魔王はこちら 放課後の教室。窓から差し込む陽射しが、少しずつ傾いてきていた。 黒板には「避難訓練ごくろうさま!」の文字。けれど、教室の話題は別の方向で盛り上がっていた。 「見て見て!『7.5』ってロゴ入りTシャツ、届いた~!」 クラスの男子・リョウがふざけたように制服の下から白いTシャツをめくって見せた。胸には黒字で大きくこう書かれている。 “The End Is Coming – 2025.07.05”そして背中には“世界最後の登校日”というふざけた文字。 「それ、マジで作ったの?」「ヤバすぎ!」周囲が爆笑する中、何人かの女子も […]
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2025年5月11日 配信
あなたが見る未来「運命の7月5日」*プロローグ(第1話)7月の大魔王はこちら 家に帰ると、キッチンからカレーの匂いが漂ってきた。 妹のひよりがテレビを見ながら「お兄ちゃ~ん!」と駆け寄ってくる。その後ろでは、母の佳代が「手洗ってから!」と声をかけていた。 「ただいま」一星は笑って返し、ランドセルを置くと、リビングへ向かった。 夜。食事が終わり、ひよりが眠りについた頃、父の真人が缶チューハイ片手にベランダに出ていた。夜風がまだ少し冷たく、一星は上着を羽織って後を追った。 「父さん、またUFOでも探してんの?」 「お、星野探偵団、参上か」真人は笑いながら星空を見上げていた。 「今日は冗談抜きで聞き […]
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2025年5月11日 配信
あなたが見る未来「運命の7月5日」*プロローグ(第1話)7月の大魔王はこちら 夕方の教室は静まり返っていた。帰りの会でざわめいていた空気は消え、窓の外からは遠くの波音と、湾岸を走るトラックの音だけがかすかに聞こえる。星野一星は、机の下に落ちていたプリントを拾い上げて、ふうっとため息をついた。 「残ってたのか、星野」 声の主は、小山先生だった。資料を手にしたまま、教室の入り口に立っていた。 「はい。プリント落としちゃって、すぐ帰ります」 「焦らなくていいよ。俺も資料室に行くついでに寄っただけだしな」小山先生はそう言って、窓際へ歩いてきた。カーテンを軽く押しのけて、空を見上げる。 「……夕焼け、き […]
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