2022年1月17日 配信
心の運動療法家、岡本浩之です。
1月15日の朝、東京大学弥生キャンパス前にて、高校2年生の男子が共通テストの受験生を含む3名を襲い重軽傷を負わせるという事件が起きました。
刺傷事件を起こす直前には東大前駅にて火を付けようとしたり、可燃性のある液体を所持していたりといったことも明らかになっています。
被害に遭われた方が心身に負った傷はそう簡単に回復できるものではないでしょうし、事件を目撃した方、同じ会場で試験を受けていた方を含めて多くの人に大きな傷を負わせる事件となりました。
直接的、間接的に被害を受けた方が少しでも早く快復なさることを心より祈っております。
今回の事件でもう一つ衝撃を受けたことが、「愛知県の進学校に通い、成績優秀で東京大学理科3類(医学部医学科に進学可能)を目指す高校2年生が起こした」という事実です。
1年ほど前から学業成績のことで悩み、自殺をしたかったけどその前に人を傷つけて罪悪感を背負って切腹しようと思った、などと供述しているようです。
前日に家を出て、夜行バスで上京して犯行に及んだようですが、私には今回の被害者、加害者共にある意味では身近な存在と言えます。
私は息子が3人おりますが、長男は高校2年生で加害者と同じ年齢、そして被害者のうちの受験生とも年齢が近いです。加害者の親、被害者の親、パーセンテージはともかくいずれになる可能性も持っています。
また、私は県内では1番の進学校と言われる高校に通っており、高校生の時にうつ病が悪化し、受験勉強で非常に苦しくなって限界を感じ「東大受験に失敗したら自殺する。」と心に決めてその方法も高校2年生の3月には具体的にイメージして下見もしていました。
もちろん、人を巻き込んでどうにかしようという発想はなかったですが、加害者とは全く無関係の境遇ではないと言えます。
加害者との共通点を述べると、「お前は加害者に肩入れするのか?」「被害者やその家族への配慮はないのか?」とお𠮟りを受けると思います。
もちろん、被害者の回復が何より大切ですし、どんな事情があっても事件を起こしたことは許されるべきではありません。
加害者は精神鑑定を受けるでしょうが、責任能力は充分あると判断される可能性が高いと予想しています。
そして、もし私が被害者の親だったら、冷静に加害者の背景を考える余裕はないと思います。
しかしそれでもなお、加害者の背景を考えることは必要だとも感じています。それは、加害者に肩入れするためではなく、新たな被害者をなるべく生み出さないために、です。
実行は出来ないけど、今回の加害者と同様の境遇にいて同様のことを考えている人は決して少なくないと感じています。
そのような人が新たな加害者にならないためには、まず今回の事件の加害者の背景を知ることが必要です。
成績が上がらず悩んでいた、という供述を聞くと、「受験勉強の結果で人生がすべて決まるのではない。」「受験で成功してもその後の人生で失敗することはあるし、逆に受験で失敗してもその後の人生で逆転出来る。」と言いたくなりますが、今回の事件は分かりませんが、多くの場合に当人は理屈としてそれは理解していることが多いです。
「でも、現時点では受験勉強で東大理3に合格することが全てであり、それに失敗したらその先の人生が何も描けない。」
そんな感覚に陥っているのではないかと想像しています。
私が高校時代は、「食事も睡眠も崩れて苦しい状態で、受験に失敗してあと1年浪人して耐えられる自信がない。」ために自殺を決意しました。
当時は、悩みを吐き出せる、否定せず受け止めてくれる人間が周りにいなかった(本当はいたはずなのに私が見つけられなかった可能性もありますが)ことで視野が狭くなって自分を追いつめていたように思います。
今回の事件で、「進学校だから学校や親が『勉強しろ、医学部を目指せ、東大を目指せ!』と追い込んでいた結果なのでは?」という学校や親への批判を目にしました。
しかし、そうやって誰かを悪者にして攻撃して排除しても、このような事件の連鎖は止まらないと感じます。
犯行に対して厳しい罰を与えることは もちろん抑止力になり得ますが、同じような境遇の人が「厳罰になりたいから周りを巻き込んで。」と逆に極端になる可能性もあります。
先ほどは高校時代の私に足りなかったものとして述べましたが、「頭ごなしに否定されることなく悩みを聴いてくれる、受け止めてくれる場所」があることが、今回のような加害者になりそうな手前で踏みとどまる抑止力として働いたケースを度々経験しました。
それだけで解決することではないとはもちろん承知しています。また、加害者を厳しく罰することは否定しません。
それに加えて、新たな加害者、被害者を生まないために出来ることは何か、考えて意見を出し合えたら良いと思っています。
全くの余談ですが、私が受験生の時に2月末に2次試験を受けた会場が今回の「弥生キャンパス」で、宿から電車移動して「東大前駅」で降りて会場に向かいました。
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