2025年6月25日 配信
体中が痛い!必死に体中をまさぐった。
くそ!全身がひりひりする!
俺は思わず叫びそうになり、はっと我に返った。
は!ここは‥‥‥事務所だ。
俺の事務所にあるベッド。
酷い悪夢だ‥‥‥
きしむベッドで上半身を起こした俺は頭を抱えて深いため息をついた。
くそ!早いな‥‥‥体中が痛み出した理由は、わかっている。
早く、飲まないとな。あれを。
はだけたシャツの内側から見え隠れするのはやせ細った青白い体。
両腕に浮き出た無数の血管が痛々しい。
さらに全身に広がるのは内部から搔きむしるような痛み。
目覚めが悪かったのでゆっくりと起き上がった。いつものくたびれたスーツにネクタイという姿でキッチンに向かった。
ここでまともな人間なら、朝食には熱いコーヒーとクロワッサンなどを摂取すると思うが、俺は違う。
まず、バーボンが入った瓶を手に取り、生ぬるいその液体を胃に流し込む。
問題はない。俺の場合は熱いブラックコーヒーやアルコール濃度の高いウィスキー、どれを摂取しても全部、同じなのだから。
何を言っているのかがよくわからい?
悪いな。出し惜しみするのはもうやめる。
つまり、水もコーヒーも酒も味が一緒だってことだ。何も味を感じることができないんだ!
食い物だってそうさ。ただ一部例外を除いては。
冷蔵庫に手を伸ばし、中を除く。
切り落とされていない生ハムの塊がある。
完全なる生肉とはいえないが、今はこれで我慢してやる。
話に戻るが‥‥‥俺には常用している薬がある。
それは15センチほどの円筒形の樹脂ケース、いわゆるピルケースという容器に入っている。
外観は琥珀色に白いキャップ。
その中に大量の白い錠剤が見える。
そこで緊急にサイラス社が投与し始めたのがフェネンタルだ。
投与してから数分で軽いめまいとふらつきの症状がある。
真っすぐ歩けず、前のめりでふらふらと歩く摂取のその姿はまるでゾンビのよう。
服用してから三か月、正直な話‥‥‥効果があるとは思えない。
肉の匂い、生肉、闊歩する人間たち。その者たちにかぶりつきたい!そんな渇望がますます酷くなっているからだ。
これは、明らかに症状が悪化しているといえないか?
一体、何のための投与なのか?治療薬とは名ばかりの合成麻薬という噂もある。
フェネンタルは即効性だが、一度の服用の効果が短く一日最低6回以上、こまめに飲まなくてはいけない。
🌟効果1:慢性的な体の痛みを抑える。
🌟効果2:人肉嗜好を抑える。
🌟副作用1:めまいとふらつきがある。
🌟副作用2:幻覚作用がある。
あの日も💊フェネンタルの効果が切れかかっていた。関節から全身へと広がっていく謎の激痛。筋肉は急激に衰えて浮き出した血管が飛び出していた。それに加え 全身を搔きむしるほどの異常なかゆみ。爪を立てて掻けば、剥がれそうだった。まるで、徐々に肉が腐っているような──
部屋の隅に置いてある💊フェネンタルが大量の入った段ボールを慌てて、こじ開けた。琥珀色のピルケースの白いキャップを回し、💊フェネンタルを一錠取り出して口に放り込んだ。
そうして、数分後──
めまいが酷くなっていたので、椅子に座り何気なくデスクミラーを見てしまった。
そして、忘れもしないあの姿が‥‥‥写っていたのだ。
その変わり果てた姿に目を背けずにはいられなかった。最初は茫然としたままだった。一体、何が起こったというのだ!
こ、これはまるで老人のような‥‥‥いや、それよりも酷い容姿。腐りかけの──
目じりは酷く垂れ下がり、頬はこけて唇全体はひび割れて紫色に変色して、だらんと垂れ下がっていた。肌の色は酷く青白く‥‥‥眼球が白く濁りまさに死人そのものだ。
とどめは、自分でもわかるかすかな腐臭だ。死臭というべきか?
俺は認めない!こんな姿!これは俺じゃない!俺じゃない!
俺は二度とミラーを見ないと誓った‥‥‥
そして、その数日後にそれを上回るあの悲劇が起こった。
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