2025年7月3日 配信
奴を止めねば!街の人間に喰いつき、大変なことに!こいつに噛まれた奴がまた死人になって──ネズミ算式で増え続け‥‥‥俺は愕然とし奈落の底に突き落とされたような気分になった。
生きる屍の弱点はわかっていた。頭部を破壊するしかない。しかし、簡単に頭蓋骨をかち割り、中の脳ミソを破壊することは容易ではなかった。柔らかい部分を狙って脳天まで刃を刺し込まねば!後頭部──いや、あそこだ!
ダガーナイフを手に奴を押し倒し、こめかみに刃を突き刺した。俺は必死だった。死にぞこないは呻き、両手と両足をばたつかせていたが、徐々に抵抗が弱くなっていった。やがて‥‥‥動きを止めた。そう、機能は完全停止したのだ。
しかし‥‥‥
確かにフェネンタルを飲んだ。そして、消えたのは全身の痛みだけ?
🌟効果1:慢性的な体の痛みを抑える。
🌟効果2:人肉嗜好を抑える。
🌟副作用1:めまいとふらつきがある。
🌟副作用2:幻覚作用がある。
しかも、感染源はこの俺だ‥‥‥くそったれめ!なんてことだ!
それにしてもサイラス社め、何のための投薬だ?ふざけやがって!
めまいが酷くなっていた。真っすぐに歩けずによろついていた。
俺はこのことは生涯、誰にも話さないと誓った。
俺は間違いなく死人を葬ったのだ。あの薄汚い路地で。
路地で起きた事件後は生きた心地がしないほど、びくびくしていたが何事もなく一週間、二週間、一か月と経過。ニュースの片隅にも出てきやしない。区悪犯罪が多発するこの街では残虐な殺しや行方不明者などは日常茶飯事。汚職率50パーセント以上の警察も頼りにならない。さらにはヘル・パンクスなどという奴らがのさばっている始末。路地での脳天を刺されたケチなチンピラなど誰も気にしないのかもしれない。それにだ、あれは正当防衛だ。俺は死人が広がるのを防いだんだ!
おどついていた自分を打ち消した。
俺は胸に誓った。この腐った街では慎重に事を運ばなければならない。
目立つ行動は避けて、肉体と精神を健全に保ち続けねば。
フェネンタルの効果は懐疑的だが、体の痛みのことを考えるとまだやめるわけにはいかない。
もっと効果が出るまで飲み続けるしかないのか‥‥‥
気は進まんが、こまめに摂取だ。
気がかりなのはこの街だ。
殺人、強姦、放火、暴行、傷害、恐喝、窃盗、抗争──
まともな住民などほんの一握り。
そんな街で俺は探偵として生計を立てている。
ここは神に見放されし街。
ニューヨークシティにようこそ。
続く
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